ディフェンダー定番のスイベルシールからのグリス漏れ。
スイベルシールの交換はそれなりに重作業なので、もう何年も
きれいに拭き取ってはスイベルグリスの継ぎ足しで取り繕ってきた。
必要なシール類もガスケットも「いつかやらねば」と思いつつ
購入はして補修部品棚にストックだけはしてあった。
わかっちゃいるけど気がつけば何年も。これではいけません!
と言うことで、意を決してスイベルシールの交換をすることにした。
「でも、漏れ出た量を考えても減っている量が多くない?」漠然と思っていた。
エキスパートの皆さんは既にお気づきのこと。今回はその原因も。
「パワフルいけいけ作戦」
ハブアッセンブリ(&ブレーキローター)とドライブシャフトごと
スイベルハウジングを摘出する作戦。
こちらの方法のメリットは
・作業行程が少なく時間短縮が出来る。
・フランジドライブのガスケットを用意しなくてよい。
デメリットは
・クソ重いので腰への負担は激烈。(一人で持てない程ではないがかなり重い)
・重いが故、最後ドライブシャフトをデフに挿入するのに苦労する。
・どうしてもブレーキローターがグリスで汚れる(最後にキレイにすればよいですが)
「かるがるコツコツ作戦」
ハブアッセンブリ(&ブレーキローター)までを外して
スタブアクスルとドライブシャフトごとスイベルハウジングを摘出する作戦。
こちらの方法のメリットは
・軽いので作業が楽になり、腰への負担が少ない。
・ブレーキローターに気を遣わなくてよい。
デメリットは
・作業工程が多いので、その分時間を要する。
・準備部品にフランジドライブのガスケットが必要
・ハブナットを外す為の工具が必要(52Φソケット)
後に説明しやすいように30分悩んで勝手に作戦の名前をつけた。(30分悩んだ割にセンスのカケラもない)
実は今回試しに、「パワフルいけいけ作戦」と「かるがるコツコツ作戦」 敢えて両方の作戦を経験してみた。
どちらの方法でやっても作業結果は同じではあるが、身体への負担は大きく違う。二人以上で作業するなら「パワフルいけいけ作戦」をすすめる。
REEの様に一人孤独に作業をするのであれば「かるがるコツコツ作戦」をすすめるが、パワーに自信がある向きであれば「パワフルいけいけ作戦」でもよいかも。
いずれにしても、車の基本性能「走る」「曲がる」「止まる」すべての要素を分解していじる事になる。
外すボルトもそれなりに多いので、トルク管理もちゃんとして。あ、忘れた じゃ済まされない場合もあるので、しっかり確認しながら作業したい。
作業するための工具で注意点
・ブレーキキャリパーを止めているボルトの為に2重六角(12pt)13mmのソケットが必要。
・スイベルハウジングをアクスルケースに留めているボルトの為に2重六角(12pt)14mmのレンチが必要。
・ハブナットを外す為に52mmのソケット等が必要。(「かるがるコツコツ作戦」のみ)
その他の工具などは当然として、以下のモノを揃えておかなければならない。(片側につき1個ずつ)
今回スイベルシールの交換だが、そうそう開ける所でもないので一緒にやっておくべきドライブシャフトのシール交換も行う。
スイベルシール
FRC4206
アクスルケースガスケット
FTC3646
ドライブシャフトシール
FTC3276
スイベルシール交換のみなら不要
フランジドライブガスケット
571752
パワフルいけいけ作戦なら不要
コッターピン(2.4Φ×25)
左写真のコッターピンは、「パワフルいけいけ作戦」でも「かるがるコツコツ作戦」でも
ロッド類のボールジョイントを外すので必要になる。
アクスル左側だけの作業の場合、「クロスロッド」と「トラックロッド」を外すので、2本必要。
右側だけの作業の場合、「トラックロッド」だけでよいので、1本必要。
左右とも作業をするのであれば、3本必要になる。
再使用できなくもないが、取り敢えず針金的なもので代用も可か。
この他「かるがるコツコツ作戦」で行う場合
・ハブナット(RFD100000)と
・フランジドライブのサークリップ(549473)と
・フランジドライブのボルト(BX110095M)は
Workshop Manual には再使用不可となっている。
本来であれば要新品と交換である。が、REEはガスケットやシール類以外は数回再使用しちゃう事が多い。
では、ここから作業開始!何はともあれ、ジャッキアップしてジャッキスタンドをかける。
ジャッキスタンドだけになったら、その状態で車体を揺すってみて安定しているか安全を確認。
片側ずつ作業をする訳だが、両輪浮かせた方が作業によって舵角を手で動かせるのでよい。
スイベルハウジング上部
ABSセンサーはプライヤーなどで引き抜く
左の写真、ホイール付いてるけどホイールは外します、もちろん。
ピンクで囲った部分、アッパースイベルピンに挿入されているABSセンサーのケーブルとブレーキラインを留めているブラケットごと外す。
水色の矢印の部分はマッドシェードプレートに挟まっているだけ。
赤い矢印のABSセンサーを抜いておく。 プライヤー等でククッとしながら上に引けば引き抜ける。
黄色の矢印のアッパースイベルピンを留めてあるボルト2本を外す。17mm六角。
シェードに挟まっている部分は割と固いので
ピンクの矢印ら辺のブラケット部分をツンツン叩いて外す。
これで、ブレーキキャリパーとブラケットを一体で外せる。
ちなみに、スイベルピンの下側にシムが数枚挟まっていると思うが
スイベルハウジングが回る時の作用力調整用。
ブレーキパッドのリテンションピンとスプリングを取り去り
キャリパーピストンツールなどでブレーキパッドを押し広げ外す。
ブレーキキャリパーを留めている裏側の2重六角(12pt)13mmのボルト2本を外す。
ブレーキキャリパーをブラケットごと取り外す。
S字フックなどで程よき所にキャリパーを吊るすか
安定する丁度よい台を設置して置くか。どちらでも。
アクスル左側の場合「クロスロッド」と「トラックロッド」を、アクスル右側の場合は「トラックロッド」のみ外す事になる。
アクスル右側の「トラックロッド」はスイベルハウジング摘出時と一緒じゃないと抜くことが出来ない。
タイロッドエンドプーラーを使用した。ブーツはそのまま使いたいので傷をつけないように慎重に。キロハンマーなどでぶっ叩いて外す方法もある。
クロスロッドやトラックロッドのボールジョイントブーツは
日本国産でジャストフィットのものを手軽に入手出来ます。
大野ゴム工業 「DC-2123」
amazon、楽天、Yahooショッピング、モノタロウなどから入手可能。
車検直前にブーツ破れが発覚しても直ぐに対応できます。
現在REEのクロスロッドのボールジョイントブーツはこれを使用してます。
留め金具やスプリングバンド等は付属されていないので
REEは0.9mmのステンレスワイヤーをクルクルっとして使ってます。
「かるがるコツコツ作戦」ではもうひと手間あるので
ここではまだスイベルハウジングは外しません。
スイベルハウジングとアクスルケースを
留めているボルト7本を外す。
頭サイズは14mm。ラスペネ必須。
ソケットで早回ししたい所だが
ソケットは使えない。
45°オフセットレンチを使用した。
ストレートレンチでも大丈夫と思う。
めちゃ固いのでリーチは
長いに越したことはない。
ある程度緩んだらラチェットの出番。
これが有ると無しでは大違い。
出来るなら用意したい。
このボルト、7本中何本かは固着気味だったりする。
そんな時はバーナーで炙ってみる。
真っ赤になるまでやらなくても、ある程度で十分効果があった。
錆びついて固着というよりはネジロック剤が炙った事によって熱で緩むのか?
スイベルハウジングがアクスルケースと固着している場合は、スイベルハウジングにハンマーなどでショックを与える。
とにかくクソ重いので、この様にジャッキをあてがいそのまま引き出すが、支えるところが丸いこともあり
ハブは回転するし安定悪く、一人作業だとめちゃめちゃ苦労する。ジャッキをあてがう場所が悪いか?
うまく引き出せたら、裏返しのホイールに設置すると作業しやすい。これ、国内海外問わずみんなやっている技。
このあとシール交換の作業は後ほどの「共通作業2」のコーナーで。
ひとまず「かるがるコツコツ作戦」の説明に移ります。
ハブキャップを外す。
あまり深く引っ掛けるとフランジドライブの
溝に引っかかり一向に外せない。
サークリップを外す。
シムワッシャーが数枚入っている事もある。
フランジドライブのボルトを5本外す。
頭サイズは17mm六角
供回り防止でつっかえ棒をするとよい。
ハブナットを外す。
52mmのおばけソケット。
210Nmで締まっているので
それなりのリーチのレンチでないと外すの大変。
写真は600mmのスピンナハンドル。
これでハブアッセンブリが抜ける。
ハブワッシャを先に取って置くと抜きやすいかも。
両親指でベアリングを押さえつつ引き抜く。
ハブアッセンブリはしばし休憩頂く。
ベアリングにゴミなどが
入らないように養生をしておく。
スタブアクスルとスイベルハウジングだけになった。
トラックロッドがまだ抜けていないが。。
右側のトラックロッドは
トラックロッドガードが引っかかって
この段階ではまだ抜くことができない。
スイベルハウジングとアクスルケースを
留めているボルト7本を外す。
頭サイズは14mm。ラスペネ必須。
ソケットで早回ししたい所だが
ソケットは使えない。
45°オフセットレンチを使用。
ストレートレンチでも大丈夫と思う。
めちゃ固いのでリーチは
長いに越したことはない。
ある程度緩んだらラチェットの出番。
これが有ると無しでは大違い。
出来るなら用意したい。
このボルト、7本中何本かは固着気味だったりする。
そんな時はバーナーで炙ってみる。
真っ赤になるまでやらなくても、ある程度で十分効果があった。
錆びついて固着というよりはネジロック剤が炙った事によって熱で緩むのか?
アクスル右側作業の場合トラックロッドは
スイベルハウジングが摘出できる状態でちょっと傾けると抜くことが出来る。
ハブアッセンブリを外すだけで「パワフルいけいけ作戦」よりかなり軽量になり摘出作業も楽。
それでも、バランス的にはドライブシャフトは結構重いので注意。
重いハブアッセンブリがないので「パワフルいけいけ作戦」の様に
摘出したスイベルハウジングをホイールに設置という技は使えない。
スタブアクスル分の出っ張りを逃がせる台が必要。REEはDIY用の作業台を使って設置した。
では、共通作業2でシールとガスケットの交換へ。
リテーナープレートのボルトを6本外す。
頭サイズは8mm。
リテーナープレートを取り外す。
結構汚れているのでキレイに清掃。
スイベルシールを外す。
マイナスドライバー等で持ち上げると
割と簡単に外せる。
シールの挿入口を清掃。
ちょっとテキトウすぎるかな。。
新品のシールのリップ部分に
スイベルグリスを塗って挿入する。
向きは溝のある方がスイベルハウジング側。
最後、キレイに清掃したリテーナプレートを
6個の不均等な穴に合わせて取り付ける。
締め付けトルクは11Nm。
かなり緩く感じるが、そう指定されている。
ドライブシャフトシールを外す。
この様なシールプーラーを使った。
上手く引っ掛けるのにコツがありそう。
新品ドライブシャフトシール。
裏側はワイヤーの入ったモノ。
ドライブシャフトシールを挿入。
リップ部にスイベルグリスを塗ってシャフトを通す。
シャフトに沿って均等に叩き入れる。
新品のシール挿入完了
ツラ位置までしっかり挿入する。
古いガスケットを外す。
貼り付いて苦労することはなかった。
アクスルケース接合面に薄っすらスイベルグリスを塗って
新品のガスケットを不均等な7個の穴に合わせて貼り付ける。
これで交換作業完了。
次は復元作業に移ります。
「パワフルいけいけ作戦」は、特に重いので注意しながら挿入。
「かるがるコツコツ作戦」も慎重に挿入。
アクスル右側の場合、スイベルハウジングを固定する前に
トラックロッドのボールジョイントを入れておくのを忘れずに。
アクスル左側のトラックロッドとクロスロッドは後でも入れられる。
スイベルハウジングをアクスルケースに挿入したら
ドライブシャフトのスプラインをアクスルケース内の真ん中目掛けて
デファレンシャルのスプラインに差し込むイメージで探す。
シャフトを回したりして首尾よく見つかればズコッと入る。
スイベルハウジングを留めるボルトは7本。
ボルトにはネジロック剤を塗布する。
使用したのは「ロックタイト243」中強度。
ステアリング切れ角を抑制するプレートも忘れずに。
「Lock Stop Bracket」 と言うらしい。
7本のボルトの締付けトルクは73Nm 。
ここは手力レンチになってしまうかな。
「パワフルいけいけ作戦」はこの後ブレーキキャリパー、ABSセンサーやブラケットを戻すが、その説明は「共通作業3」のコーナーで。
ひとまず「かるがるコツコツ作戦」の説明に移ります。
スタブアクスルをキレイに洗浄してベアリンググリスを薄く塗る。
ベアリンググリスがない場合は
ハブアッセンブリ内のベアリンググリスをちょいと借用。
ハブアッセンブリをスタブアクスルに慎重に装着する。
少し入りにくいかもしれないがジワジワコジコジ押してる内に
スッ、ズルーと入る。
余りに引っかかる様ならハブワッシャーと表側のベアリングを
一度外して 後から入れるとやり易いかもしれない。
ハブロックナットを締め込む。
ハブロックナットの締付けトルクは210Nm 。
スタブアクスルの平らな所でかしめる。
写真のカシメはキレイだが、後で外す時に苦労する。
ほどほどに。
フランジドライブの装着部に
薄くグリスを塗ってガスケットを貼り付けておく。
フランジドライブ側に貼り付けるよりやりやすくなるハズ。
フランジドライブを装着する。
ボルトにはネジロック剤を塗布する。
使用したのは「ロックタイト243」中強度。
5本のボルトの締付けトルクは65Nm 。
もともとシムワッシャーが入っていたなら
サビを落として同じ枚数入れるのを忘れないように。
サークリップをしっかり溝に入れて装着。
ドライブシャフトが奥に入っちゃってたら
フランジドライブのボルトを
ドライブシャフトの真ん中のネジ穴に入れ引っぱるとよい。
ハブキャップも忘れずに。
これ、飾りじゃないです。
割と大事な部品です。
REEはこれが経年劣化で割れて放って置いたら
ハブベアリング内に水が混入しました。
トラックロッドとクロスロッドのクラウンナットを留める。
先にも書いたとおり、アクスル右側のトラックロッドは、スイベルハウジングを固定してからでは入れられないので注意。
トラックロッドもクロスロッドも締め付けトルクは40Nm 。
コッターピンを挿入して外れ留めをする。
クラウンナットの隙間とコッターピン挿入穴が合わない場合は、クラウンナットをずらして調整。
ブラケットはマッドシェイドに挟むのを忘れないように。ABSセンサーもググッと挿し戻す。ブラケットのボルト2本の締め付けトルクは65Nm 。
ブレーキキャリパーを装着。ブレーキキャリパーのボルト2本の締め付けトルクは82Nm 。
ブレーキパッドの向きは、リーディングエッジが下になるように装填。スプリングを挟んでリテンションピンを挿し込み、スナップピンで留める。
スイベルグリスを補充する。
スイベルグリスは、「Texaco EP00」と指定されている。(極圧対応のリチウムモリブデングリス ちょう度00)
今回はボトルタイプを使用。 スイベルハウジングのグリス規定容量は片側350cc。
スイベルハウジングのフィラープラグは、3/8sq(9.5sq)のレンチを使用する。
スイベルグリスの注入は、ステアリングを切った状態で行うと、左の写真の様に半分深く見えるので注入しやすくなる。
今回の作業では、ハウジング内部のグリスが残っているので、実際どれだけ補充したらよいのかわからない。
入れ過ぎもそれはそれで抵抗になるやらで良くないと言うが、、んま、程よさげな量を注入。(としか言えない。。)
REE的には長年補充で凌いできたカンがこんな所で役に立つ。
これで作業終了です!。
ホイールを付けてジャッキスタンド外す前に本当にすべてのボルトを締めましたか?トルクも?忘れてる事はない?
しっかりと反芻して確認してください。
ブレーキピストンを押し広げたままです。走り出す前にブレーキを数回踏んでピストンを戻して!!
スイベルグリスが減る理由はー
スイベルシールからの漏れも有るでしょう。
しかし、他に理由がある。薄々感づいている方も居るでしょう。
今回の作業でその理由が明らかとなりました。こちらです!
スイベルハウジングを外したアクスルケース側。
この垂れてくるものは明らかにデフオイルの色じゃない。
いくらデフオイルが汚れてもこんな色にはならないでしょう。
この独特な色は、どう見てもスイベルグリス。
アクスルケース側にスイベルグリスが行かない為に
ドライブシャフトシールがあるのです。
ドライブシャフトシールも交換して正解でした。
デフオイルのドレンからは
なんてことでしょう。
これはもはやデフオイルではない。
本来のデフオイルは
この色でしょう!
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